２００２年、生産者から見たアラブの現状と未来
アングロアラブ生産を取り巻く状況は年々悪化の一途を辿り、もはや「厳しい」どころの話ではないというのが現状です。２００１年に私自身北海道へ行き、門別、新冠、静内といった馬産地の牧場の方々から直にお話を伺いましたが、想像以上に厳しい状況である事を思い知らされました。そしてもう一つ、皆さんが口を揃えておっしゃったのは「来年はさらに悪くなるだろう」という言葉でした。
迎えて２００２年の繁殖シーズン。今年の生産状況はどうなっているのか、昨年見学させて頂いた牧場の一つであるスターファームさんにお聞きしたところ、現状とこの先の見通しについて回答を寄せて下さいました。
今回スターファームさんの許可を得て、私に送って下さったメールを掲載します。馬産地におけるアラブ生産の現状を皆さんにも知って頂ければと思います。
○スターファームについて。
北海道新冠町にあるスターファームは、４年連続リーディングサイアーに輝いたスマノヒットを始めとする優秀なアラブ種牡馬を何頭も繋養されている他、自家生産、育成も行なわれています。
アラブ生産者を取り巻く環境は毎年どんどん悪化の一途を辿ってます。
地方競馬自体が存続の危機にさらされている現在、アラブ生産者にとっては
とても厳しい状況です。というかアラブ生産者はどんどん減りつづけてます。
かといって弱小生産者がサラブレッドに切り替えるというのも、非常に困難な
ことです。
良血を求めればかなりな資金を使い、高額の種付料、そしてサラブレッドでさ
えも
この不況とあちこち地方競馬の廃止により需要が減っているのですから。
生き残るための生産者同士の競争はさらに厳しいのです。
知り合いにも牧場を止めてしまう人がいますが、残念ながらこれからは益々多
くなると思います。
生産者はアラブには見切りをつけているけど、だからといってサラブレッドで
も食べていけない！
うちにいるアラブの種付頭数はコウザンハヤヒデが２０頭ぐらい、スマノヒッ
トが１７，８頭・・・（※注１）
だいたい予想していたとおりの数字です。スマノヒットももう歳ですがまだま
だ元気です。
ヒットオーエンスはもう出してしまう予定でいたのですが、産駒が重賞を勝っ
て（※注２）、
出せなくなったなと主人が話してました。種付はほとんどないんですけどねぇ
・・・
-----------------------------------------------------------------------------
アラブはこれからの競馬社会においても貴重な品種だと思います。
今後は地方競馬の小さなところは廃止され
大井など限られたところだけしか残らなくなると予想されます。
地方ばかりでなく中央も馬主が減っているので、
生産者もオーナーブリーダーとしてやらなければならない時代が来ています。
日本のアラブ種はダート競馬で立証されているのだから、サラとの配合による
サラ系（※注３）を作って出走させようと自分は思っています。走る確立は高いと思います。
昨年、北海道競馬でもフレッシュ（中央競馬認定競走）競馬でサラ系が
勝ち名乗りを上げました。また今年の兵庫大賞典もスマノヒットの産駒が
サラブレッドを破って優勝しました。
これを見てもアラブ種は侮れないと思います。
これからも良血アラブ種を残していきたいと思います。
-----------------------------------------------------------------------------
※前半は社長の奥さん、後半は社長からのメッセージです。
（注１）･･･昨年の種付け数は、スマノヒットが２０数頭、コウザンハヤヒデが約３０頭。今年は前年と比べて３〜４割減。アラブ全体の生産数もこれに比例していると思われる。なお、昨年生産されたアラブの数はとうとう５００頭を割った。今年、来年の登録数を考えると心苦しい。
（注２）･･･２００２年６月１２日に荒尾競馬場で行なわれた「荒尾記念」でイマリオーエンスが優勝。産駒の初重賞制覇となった。
（注３）･･･血統に占める純血アラブの割合（アラブ血量）が２５％未満になると競馬ではサラブレッド系競走馬として扱われる。現在繁殖馬のアラブ血量は３０％〜２５％のものが多いので、これにアラブ血量０のサラブレッドを種付けすると、当然生まれてくる仔のアラブ血量は２５％を割ることになる。
トップページに戻る