栄駿賞 観戦レポート
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指定特別・栄駿賞は、１２月１１日に園田競馬場で行なわれる２歳重賞「園田２歳優駿」のトライアル競走だ。元々は同じ時期に「市川賞」という重賞競走があったのだが、これが廃止されて代わりに誕生した指定特別が栄駿賞である。イメージ的には市川賞の指定格下げ。かつて市川賞の前哨戦として行なわれていた指定特別が「園田３才優駿」であり、これが重賞に格上げされ２００１年からの年齢表記変更でレース名を改めたのが「園田２歳優駿」。昔と立場が逆転した２つの２歳競走である。 さて、兵庫ではアラブ２歳馬入厩停止を来年に控え、その影響からか今年は急激な２歳馬入厩数減に見舞われている。また、競走規模縮小が進められた為もあるだろうが、今年は「Ｔ１戦」（２歳オープン特別）がまだ１度も行なわれていない。つまり、今年はこの「栄駿賞」が２歳の初特別戦になる訳だ。今年の「栄駿賞」メンバーは以下の通り。 ・ 姫路 第10競走 栄駿賞（２歳オープン・指定特別） 1500ｍ １ アイファーマドンナ 53 松浦高 447 -1（２・１・３・１） ２ ワールドイッコウ 54 高 馬 470 -6（１・１・０・１） ３ ハッコーカレッジ 54 小牧太 468 -8（１・２・０・２） ４ シルクダイオー 54 米 田 435 -1（１・１・２・４） ５ ダイセンヤマト 54 平 松 474 -4（１・１・０・６） ６ ニホンカイブルー 54 三 野 451 +9（１・０・１・４） ７ ベロシダハーバー 54 木 村 518 +3（１・０・１・０） ８ クールフォーチュン 54 岩 田 430 +2（２・３・１・１） ９ ホワイトタイガー 54 赤 木 455 -2（２・０・０・４） 10 ホーエイキング 54 寺 地 489 -3（１・０・１・５）※左から馬番、馬名、斤量、騎手、馬体重、前走比、１着、２着、３着、着外の数。 斤量は牝馬１キロ減。 出走馬が全て１勝以上している事は、入厩減の中にあっても兵庫が高い質とそれなりの量を維持している証だろう。ただ、残念な事にこのレース、今年の２歳筆頭が出走していない。６戦４勝２着２回のワシュウビジンは、前開催のＦ１戦（２歳最上級の平場戦）に続いて今開催も休場。ワシュウジョージの妹でもあるこの馬の姿を見るのを楽しみにしていただけに、出馬表が出た時点で個人的に結構がっかりした。ただ、ワシュウビジン以外にも楽しみな逸材が豊富な兵庫の２歳。特にワシュウビジンとトップを争っているクールフォーチュンと、前走ワシュウビジンを下したニホンカイユーノス産駒のホワイトタイガーは、今年の栄駿賞の中心と目される馬である。 クールフォーチュンは、現在兵庫の古馬戦線をリードしているクールテツオーの全弟である。クールテツオーは第１回の栄駿賞を優勝しており、今回クールフォーチュンは栄駿賞の兄弟制覇に挑む事になる。成績の数字だけ見れば他の２勝馬と大差ないように見えるが、ワシュウビジンとは僅差の接戦を幾度となく演じており、３走前はワシュウビジンを破っている。２歳戦線では常に上位で戦ってきており、実績的にはこの馬がメンバー中一番と言える。 ワシュウビジンは今まで２度２着に敗れているが、１度はクールフォーチュン、そしてもう１頭、ワシュウビジンを下したのがホワイトタイガーである。「競馬キンキ」紙上ではクールフォーチュンと本命印を分け合っていた。このホワイトタイガーはニホンカイユーノス産駒で、今年が初年度の同産駒の中でも有数の２勝馬。２勝目がワシュウビジンに３馬身も付けての勝利だった事から、この栄駿賞でも有力視されている。それまで８２０ｍ戦でなかなか結果が出なかった中、前走初めての１４００ｍ戦での大金星。距離延長で力を発揮し始めたと取れる成績内容でもある。今回は１５００ｍ戦だし、距離延長がプラスならば今回も期待できるのではないだろうか。 この日の姫路競馬場は基本的に晴れながら、時々雲が出たりするやや不安定な天気。山の側にあるためか、常に風が強い状況。日陰に入るととても寒かった。馬場はパサパサ。馬が走ると盛大に砂埃が上がっていた。 パドックに先立ち装鞍所の様子を見た後、寒い中パドックで各馬の入場をじっと待つ。出走馬掲示板には馬体重が表示されていたが、見る限り極端な増減の馬はいないようだ。第９競走が終わり、各馬がパドックに入場してきた。 全体的に立派な馬ばかり。大抵１頭くらいは見栄えが悪かったり貧弱な馬が混ざっているものだが、「これはちょっと･･･」という馬が１頭も見当たらず、パドックだけ見れば検討に苦慮するレースである。 注目の１頭、クールフォーチュン。装鞍所で最初見たとき「クールテツオー、そのままやん」とビックリした。同じ鹿毛馬で、同じ金ラメメンコをしているからそう感じるのかもしれないが、体型的にも胴が詰まったスピード型体型で二人引き。厩務員さんになだめられながらも、おとなしい周回だ。毛ヅヤも透き通るような鹿毛で申し分ない。やや馬体が緩い部分も見受けられるが、問題ない範囲だろう。後肢のボリュームに関しては２歳時の兄クールテツオーに比べてやや物足りないが、それでも十分立派。兄と唯一違うのはゼリーかプリンの容器を半分に割ったような、変わった形のブリンカーを装着している点だろう。全兄弟といえど、ここまでソックリな馬も珍しい。  （クールフォーチュン、装鞍所にて。ホント、兄にソックリ。） 注目のもう１頭、ホワイトタイガー。こっちはこっちで目を引く馬体。父譲りの芦毛馬なのだが、全身綺麗なグレーの馬体。まさに触りたくなるような毛並み。芦毛馬で綺麗な毛並みというのも珍しいと思う。時々小走りが入ったりとヤンチャな所を見せるものの、キビキビとした速い周回で足の運びなど動きがす軽い。スラリと背の高い体で馬格もある。立派さでは出走馬中でも１，２を争うだろう。  （ホワイトタイガー、装鞍所にて。グレーの馬体がキレイです。） 他、パドックで目に付いたのは３番のハッコーカレッジ。細身だがスマートで立派な体をしている。多少馬体の張りが物足りないが、毛ヅヤはまずまず。小牧太騎乗という事もあり、ちょっと気を付けたい馬である。 ４番のシルクダイオーは「キンキ」紙上では３番手評価となっていたが、パドックでは何度も大きく立ち上がるなど、気の悪いところを見せていた。馬そのものは後肢や胸前のつくりなどが目を引くが、道中の折り合いが心配だ。ちなみに、この５走掲示板を外さない堅実な走りをしているが、上位勢からは離されて入線している。 ニホンカイユーノス産駒と言えばもう１頭。６番のニホンカイブルーもそうである。ホワイトタイガーがグレーの馬体で若き日のニホンカイユーノスに近い毛色なのに対して、ニホンカイブルーは絵に描いたような芦毛馬（？）で、どちらかと言えば古馬になってからのユーノスを彷彿とさせる。装鞍所で、裸馬状態のホワイトタイガーとニホンカイブルーを見たが、ホワイトタイガーがステップを踏んだりしてチャカ付き加減だったのに対し、ニホンカイブルーはおとなしく広場内を引き馬されていた。パドックでもニホンカイブルーはおとなしい周回であったが、ちょっとおとなしすぎるかな、という気がしないでもない。  （ニホンカイブルー。やっぱり芦毛。） 前レースとこの栄駿賞とのインターバルは４０分。パドック周回も自然長いものとなるが、この間の九州アラブダービーみたいにたった３周で終わられるより、長いほうがまだ良いというものだ。さむかったけど（笑） 本馬場入場から返し馬の時間となった。クールフォーチュンは馬場に入ると、やや気の強いところを見せ、鞍上の岩田騎手を引っ張っていく勢いで１コーナーへとダッシュしていった。全体的に強く駆けていく馬が多かったが、皆待避所直行で再び正面を戻ってくる馬はいなかった。 栄駿賞、スタート地点は４コーナーポケットから。２歳戦ではありがちの「なかなかゲートに入らない馬」もいて、ファンファーレがなってすぐに発走とはならなかったが、そう大きく遅れることもなくゲートオープン。スタートは各馬まずまず。ハナを切ったのは３番のハッコーカレッジ。直後にクールフォーチュンが付けて、さらにこれをマークする格好で後ろにホワイトタイガー。内から唯一の牝馬・アイファーマドンナが追走。その後方の内にシルクダイオーという状態で各馬は第１コーナーにさしかかった。  （最初の直線。クールフォーチュンは２番手から。） 向こう正面で早くもクールフォーチュンがハッコーカレッジに並びかける。これを追いかけてホワイトタイガー、この動きについていけないのがアイファーマドンナで、一方でシルクダイオー、ベロシダハーバーはホワイトタイガーに続いて上昇してゆく。姫路は毎度の事ながら３角入口から４角あたりまで公園施設のため様子がわからない。実況ではどうやらクールフォーチュンが先頭に立ちつつあるようだ。 ４コーナーに差し掛かり、再び各馬が姿を表す。先頭はクールフォーチュン、やや離れてホワイトタイガーとシルクダイオー。直線に入りシルクダイオーとホワイトタイガーが懸命に差を詰めようとするが、なかなか伸びない。クールフォーチュンのリードはさほどでもなさそうだが、そのリードは全く縮まる気配を見せない。直線半ばで体制は決した。クールフォーチュンの脚色には十分余裕があり、後続馬はすでに一杯一杯の様子。クールフォーチュン、岩田騎手はゴール手前からスタンドを向いてポーズをとりながらゴールイン。直後に２頭並んで入線したが、シルクダイオーがはっきりとホワイトタイガーに先着していた。離れて４着はダイセンヤマト。クールフォーチュンの強さが光った一戦であった。  （ゴール直前。モロにカメラ目線（笑）） レースタイムは１分４１秒２、昨年よりもコンマ２秒遅い程度だから、まあこんなものだろう。なにより、着差以上の圧勝だった事を強調したい。「競馬キンキ」掲載のクールフォーチュンの担当厩務員のコメントの中に「今日の走り次第で福山遠征のプランも現実化してくるだろうし、その時には初めて目イチに仕上げるつもりでいる。」というものがあった。今回の走りは全国交流の舞台に向けて力強い限り。福山に遠征すれば有力馬の１頭となるだろう。 で、表彰式後に中野先生に「福山遠征、どうなりますか？」と聞いてみた。帰ってきた答えは「今、検討中。どうなるかは後日、また発表します。」との事。よろしくお願いしますよ、センセ（笑） ・ 姫路 第10競走 栄駿賞（指定特別・２歳） 1500ｍ １ クールフォーチュン 兵庫 牡 2 54.0 岩田康 中野明 430 2 1:41:2 ２ シルクダイオー 兵庫 牡 2 54.0 米田幸 前 田 435 -1 1:41:5 ３ ホワイトタイガー 兵庫 牡 2 54.0 赤木高 斉藤裕 455 -2 1:41:6 ４ ダイセンヤマト 兵庫 牡 2 54.0 平松徳 佐々木 474 -4 1:42:1 ５ ニホンカイブルー 兵庫 牡 2 54.0 三野孝 釣 451 9 1:42:3 ----------------------------------------------------------------------------- ６ アイファーマドンナ 兵庫 牝 2 53.0 松浦高 斉藤裕 447 -1 1:42:4 ７ ワールドイッコウ 兵庫 牡 2 54.0 高馬元 保利照 470 -6 1:43:2 ８ ベロシダハーバー 兵庫 牡 2 54.0 木村健 上田伸 518 3 1:43:4 ９ ハッコーカレッジ 兵庫 牡 2 54.0 小牧太 利国雪 468 -8 1:43:7 10 ホーエイキング 兵庫 牡 2 54.0 寺地誠 花村通 489 -3 1:45:7 |