・ 第１０競走 テレビ金沢杯 第２７回アラブ大賞典 （３歳重賞） 1700ｍ この日のメインレースは金沢唯一の３歳重賞「アラブ大賞典」。金沢を飛び越して全国の３歳チャンピオンになってしまったチョウヨームサシ。ここを勝って、改めて金沢筆頭である事を示し、勇躍福山の全日本アラブグランプリへ向かいたいところだろう。ただし、今回不動の本命かと問われれば、私はいささか懐疑的である。 というのも、このチョウヨームサシ、古馬混合戦での成績があまりよろしくないのだ。対古馬戦で勝ち鞍があるのはＢ級までで、楠賞以後は古馬Ａ級戦で走っているのだが、ここまで３着、３着、前走に至っては９着惨敗である。２走前は２組戦にもかかわらず先頭から２馬身差の３着。昨年の３歳トップクラス、ダイリンフラワ、サクセスフレンドらと比べると全く物足りない。 ただ、「同じ３歳同士なら力が違う」との事で、新聞の印はずらりと◎が並び、オッズもかぶっていた。他の３歳にしたところでＣ級やＢ級あたりで勝ち負けしているような馬がほとんどであるから、実際チョウヨームサシが相対的に抜けているのかもしれないが･･･。 とりあえず、今年春の３歳日本一に輝いた馬とはどんな馬なのかが楽しみであった。第９競走を見終わるとダッシュでパドックへ向かう。ちょうど１番のキタノキャプテンが入場を始めているところであった。 何をさておきチョウヨームサシ。青鹿毛馬なので見た目真っ黒。毛ヅヤは良い。コツコツ、と蹄音を響かせての周回で、キビキビとした動きである。体重は４７９キロであるが、体よりもずっと細身に見える。胴の詰まった体型で、後肢のボリュームもなかなかのもの。いかにもスピードがありそうで、確かに全国クラスの馬だと納得するが、強いて言えば脚の運びが多少ぎこちなく映った。 今回の出走馬でチョウヨームサシに対抗できそうな馬は１頭、元上山のチャンピオンマサルであろう。第９競走に登場したホーエチャンピオンの全弟という良血馬で、金沢へ転入してＣ級戦２戦をいずれも圧勝している。スムーズな足運びで、尻尾を振りながらのパドック周回。馬体重が５２７キロもある大型馬だが、この馬も体ほど大きくは見えない。せいぜい４８０キロ〜５００キロといったところだろう。後肢のボリュームはこの馬もかなり立派だが、全体のバランスがあまり良くないように見える。後肢から背中を経て首へ至るラインがあまり滑らかではなく、どちらかといえば直線的な起伏がある。  （チャンピオンマサル。元上山の良血馬。） 残念ながら他の馬に関しては、チョウヨームサシとは一枚も二枚も劣るというのが正直な感想。１番のキタノキャプテン、１０番のアローシスターあたりが複勝候補といった感じ。前者は体は立派だが首を盛んに上下させるなど、煩いところを見せていた。後者はＡ級３組で５着という実績があり、比較的落ち着いた周回で歩くペースが早かったが、見た目は平凡である。 昨年の優勝馬・サクセスフレンドは元は笠松の馬。今年のレースにも元笠松のスルガショウハイが出走。個人的にそう大した馬ではないと思っていたのだが、よくよく考えてみたら、サクセスフレンドも笠松時代はそう目立つ存在では無かった。という訳で、もしかしたら化けるかもと思いチェック。立ちあがるなど、引いている２人をかなりてこずらせていた。う〜ん、と唸りつつ、手元の新聞の調教師コメントに目をやると、前走はイレ込みすぎたとある。結果はＣ１戦８着。能検は１着で通っているし、今回の姿はイレ込みすぎとまではいかないだろうけど、１７００ｍ戦だけにどうだろうね、と半信半疑であった。 各馬本馬場入場を終えて返し馬へ。チョウヨームサシはキャンターで馬場を一周。正面の直線を流していった。チャンピオンマサルはダグで返し馬。正面には戻らず、そのまま待避所入りであった。キタノキャプテンはやや強めの返し馬。直線を力強く疾走していった。空は相変わらず今にも雨が降り出しそうな状況だが、何とかここまでもってくれている。結局、競馬場を後にするまで雨は落ちて来ず、この点とても恵まれた１日であった。 レースは先ほどの「石川ヤナセ特別」と同じ１７００ｍ戦、３角ポケットからの発走。アローシスターがなかなかゲートに入らず、スタートまでやや時間がかかったが、何とか全馬収まってスタートした。１頭ポツンと置かれた馬が１頭。よく見ると、それは人気のチョウヨームサシ。一方、前はキタノキャプテンがハナを切り、好スタートからチャンピオンマサルも前に取り付いてゆく。ホワイトザウルス、スルガショウハイと続き、出遅れたチョウヨームサシは最初の正面直線で何とか中団あたりにまで進出した。  （最初のスタンド前。２番手を進むチャンピオンマサル（緑帽）はかかり気味） 前は逃げるキタノキャプテンをチャンピオンマサルが追う展開。しかし、チャンピオンマサル、完全にかかっている。鞍上の藤川騎手が懸命になだめている様子が見える。一方、出遅れながらもチョウヨームサシは中団位置でじっと待機。落ち着いてレースを進めているように見える。向こう正面でキタノキャプテンが下がり、代わってチャンピオンマサルが前にでる。ちょっと鞍上の動きがせわしなくなってきたように見えたところで３コーナー。中団に控えていた馬が前との差を縮めていったが、外から一気にチョウヨームサシが前に並びかけてゆく。周囲からため息が聞こえる。チャンピオンマサルは既に後退を始めている。最終コーナーを迎えた。  （最終４角。チョウヨームサシは右から２頭目の赤メンコ。） 勢いよく前を捕えたチョウヨームサシ。後は後続を千切るだけ。直線、見る見るうちに後続との差が広がってゆく。悠々とチョウヨームサシがゴールイン。離れて、道中で一旦下がったはずのキタノキャプテンが２着入線。さらに少しはなれて、元笠松のスルガショウハイが３着に入った。５レース、９レースに続いて、今日３度目の「強い！」としか言いようの無いレースであった。  （余裕の７馬身差。そして夢は福山・全日本アラブグランプリへ･･･） 今回のチョウヨームサシはレースぶりは、とても強いものだった。改めて地元馬相手ではモノが違うという事を見せつけてくれた。なにしろ、出遅れてもあっさり捲りきって７馬身差なのだから、どうしようもない。レース前「コケるんじゃないの？」と疑っていた自分が恥ずかしい（笑）一方のチャンピオンマサルはかかったのが全て。新聞の調教師コメントの「距離もプラスとはいえないだろう」というのが的中してしまった感がある。ともかく、チョウヨームサシの一人舞台だったこのレース、もはや７馬身後ろの２着馬以降についてはコメントする気がおきない（爆）。 とりあえず、チョウヨームサシに関しては福山に向けて調子は問題なさそうだ。全日本アラブグランプリを制して「真の３歳日本一」となってくれるか、１１月の福山が楽しみである。 |