第１７回 福姫交流 観戦レポート
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福姫交流はその名の通り、福山競馬との２場間交流競走である。出走できるのは３歳補助馬（ただし中央補助馬は除く）。昨年は、その後福山三冠馬となるユノワンサイドや全日本アラブグランプリを制してＮＡＲグランプリアラブ系３歳最優秀馬に選ばれたフジナミスペシャル、愛知移籍後「帝冠賞」を制してオカノヒリュウ産駒初の重賞制覇を成し遂げる事になるボールドヒリュウが参戦するなど、かなりハイレベルな戦いであったが、今年は福山側に補助馬（馬主会補助馬の方。中央補助馬にはホワイトキャンプといった有力馬がいる）の強豪が見当たらないためメンバー的には１枚落ちる感がある。兵庫側に強い馬が１頭いる事もあり、レース前は「兵庫優勢」という雰囲気であった。 福姫交流、出走馬は以下の通り。なお、本競走は指定特別で、重賞ではない。 枠 番 馬 名 所属 斤量 騎 手 性齢 １着２着３着着外 １ １ ブルーマジシャン （福山） 54 石 井 牡３ （２・２・２・３） ２ ２ マキオライデン （兵庫） 54 松 平 牡３ （２・０・１・10） ３ ３ リードオーカン （兵庫） 54 寺 地 牡３ （１・２・１・９） ４ ４ セレクション （福山） 54 野 田 牡３ （１・４・３・４） ５ ５※スカイタカオー （兵庫） 54 坂 本 牡３ （４・０・３・２） ６ ６ ベアーダンス （兵庫） 54 松浦政 牡３ （１・１・０・２） ６ ７ トモシロトーザイ （福山） 54 藤 本 牡３ （３・２・０・５） ７ ８ ホウコウサイシン （福山） 53 黒 川 牝３ （２・２・０・８） ７ ９ クインパウエル （兵庫） 53 米 田 牝３ （２・１・３・１） ８ 10 ヒットランナー （福山） 54（三 野）牡３ （２・２・０・11) ８ 11※ルパンユイナ （福山） 53 片 桐 牝３ （４・１・３・２）注：※は重賞勝ち馬。１０号馬は山田騎手から騎乗変更。 補助馬戦線は１月の福山「園田・益田・福山交流特別」で幕を開け、兵庫所属馬には２月に園田で「菜の花特別」という補助馬限定戦があった。この２戦を制したのが兵庫のスカイタカオーである。今回の「福姫交流」を勝てば「補助馬三冠」となる訳で、メンバーを見渡しても新たに敵となりそうな馬が見当たらない以上、ここでの勝利もかなり期待できそうであった。福山と園田で、共にスカイタカオーの２着だったタッカージョージは今回不出走、対抗となりそうなのは福山のルパンユイナであったが、この馬は「園田・益田・福山交流特別」ではスカイタカオーに６馬身も離されての３着。その後、牝馬限定の「クイーンカップ」を勝ってここに挑んできた。ゲートに難がありまともに出ればの感があるが、それ以前にクイーンカップから中８日の強行軍でしかも初遠征。初めての競馬場でちゃんとゲートを出られるかどうかはとても不安だ。他の馬は、福山側は全て３歳条件馬、兵庫側は菜の花特別でスカイタカオーに完敗している面々で、２着までが精一杯と思われる。２着争いについては、菜の花特別の上位組であるクインパウエル、マキオライデン、リードオーカン、これに福山で前走３歳１組を勝ったトモシロトーザイがどう絡んでくるかといったところであった。 この日の姫路競馬場は前日までの雨で不良馬場。日中も断続的に雨が降り、馬の脚が馬場を叩きつける音が場内に響き渡る状態であった。パドックを前に、装鞍所の様子を伺うと、福山のホウコウサイシンが広場に直立しており、そのそばに２人ほどスタッフが付き添って脚のあたりを気にしている様子である。しばらくして、福山のトモシロトーザイが広場で引き運動を始める。遠めで見る限り、歩様や馬体は悪くない。この後のパドックでよく見てみたいと思う。 
（装鞍所の広場で引き運動中のトモシロトーザイ） 何とか天候が回復した中、福姫交流出走の面々がパドックに登場。兵庫が５頭、福山が６頭、合計１１頭である。なお、福山の馬には全て福山の騎手が騎乗するはずであったが、１０番のヒットランナーは鞍上の山田騎手から兵庫の三野騎手に乗り代わりと朝から発表されていた。はっきりとした理由はわからなかったので、何があったのか気になるところである。 ２番のマキオライデン（兵庫）はルックスがとても良いと感じた１頭。母は９７年の園田「のじぎく賞」(当時、兵庫唯一の３歳牝馬重賞。現在は廃止。)を優勝したマキオクイン、父はリーディングサイアーのスマノヒットと、良血馬と言って差し支えない馬であろう。栗毛の馬体は毛ヅヤも良く、体もスッキリとした肉付きで見栄えは申し分ない。なお、菜の花特別は４着であった。 ３番のリードオーカン（兵庫）は、人気のスカイタカオーと同厩舎。ただ、こちらは実力的に掲示板が精一杯と思われる。菜の花特別では５着だが、流れ込みの可能性が高い。パドックでも特に気になる点はなかったので、あまり記憶に残っていない。 ５番が人気のスカイタカオー（兵庫）。４２４キロと小型だが、見かけは４５０ぐらいに見える。毛ヅヤはまずまずだが、周回はスムーズでマイナスになる点は見受けられなかった。体重以上に体を大きく見せる馬、というのは好きなので、個人的には気に入った。  （スカイタカオー、返し馬での様子） ７番のトモシロトーザイ（福山）は４８０キロとメンバーの中では一番大きな体の持ち主。その数字の通り、迫力を感じる立派な体であった。歩様も堂々としたもので、福山勢の中ではこの馬が一番良く見えた。 ９番のクインパウエル（兵庫）は菜の花特別３着馬ということもあってか３番人気に支持されていた。が、パドックでは思わず引くくらい見栄えがしない。毛はぼさぼさ、なんだかまだら模様で、前走から９キロ減、４１６キロという体重値を裏付けるかのような肉付きの乏しい、骨っぽい体。見て一番「ひでぇ馬だなぁ」と思って、手元の新聞で馬を確認して、３番人気の馬だと知った時はビックリしたものである。 １１番のルパンユイナ（福山）は、上にマツノホープ、モナクマリンがいる良血馬でもある。マツノホープもモナクマリンも目にした事があるので、どんな馬かと期待をもってパドックを迎えたのだが、ちょっと期待はずれという感は拭えなかった。というのも、馬体のバランスがとても悪いのだ。異様に盛り上がった後肢と不釣合いな細い胴体。なんだか大型馬と小型馬の体をつぎはぎしたような姿だ。二人引きで首を高くあげて、ややエキサイト気味の周回。果たして。  （ルパンユイナ） 「止まれ」の声がかかり、控室から騎手が出てくる。１０番のヒットランナーに三野騎手が騎乗する。三野騎手は吉田アナをして「アナウンサー泣かせ」（いつもギリギリで前に突っ込んでくるため）と言わしめる追い込みの名手。特に今年は３月３日時点でリーディング４位、連対率２４．４％と絶好調。この日も１度、惜しい２着に来ている。ただ、このヒットランナー、ここまでの前５走は９着、８着、９着、１０着、９着と惨憺たるもの、しかも好位を進んでずるずる後退というレースを続けているようで、さすがにこれは単に「代わりに乗るだけ」だろうと思った･･･のだが。 本馬場入場を終えて、雲行きが再び怪しくなる。再び雨の気配、なんとかレースが終わるまでもってほしいところだ。福姫交流は１５００ｍ戦で、スタート地点は４コーナーポケット。ゲート入りはやや手間取っているようだったが、全馬収まってスタートである。 スタートはさほどバラけ無かった。ゲートの出が心配されたルパンユイナも好発進。そのまま前に取り付いてゆく。前は人気のスカイタカオーが先頭に立ち、並ぶようにヒットランナー、外からルパンユイナと３頭が競り合う状態。やや後ろに福山のブルーマジシャン、その後ろは３〜４頭続いて最初のコーナーへ。 
（１周目。前の３頭が向こう正面まで競り合います。） 前は、大抵流れが落ち着く２コーナーを過ぎてもまだ忙しい流れ。先頭を行くスカイタカオーがわずかに先頭だが、ルパンユイナも引かない。ヒットランナーは徐々に下がったようだが、向こう正面で代わりにトモシロトーザイが上昇していく。が、勢いが少々鈍い。２番手に上がろうかというところですこし脚が鈍ったように見えた。３コーナーから４コーナーは公園の影に隠れて見えない。４コーナーに差し掛かり、前はスカイタカオーがわずかに先頭、ルパンユイナ、トモシロトーザイ、隠れるようにしてヒットランナーが内にいる。ここからスカイタカオーが突き放すと確信していたのだが、そのスカイタカオーが伸びない。トモシロトーザイとピンクの帽子の騎手が乗った馬に挟まれる格好で、３頭並んでの直線勝負。内からピンク帽の馬が抜け出し、トモシロトーザイがスカイタカオーを差してさらに前に迫ろうかというところでゴールイン。ピンク帽という事で、私はこの時点では勝ったのがルパンユイナだと勘違いしていた。「クイーンカップを勝って、一皮向けたのかな」やれやれ、という気分でいたところ、なんだか周囲の様子がおかしい。  （残り３０ｍぐらい。先頭はヒットランナー。トモシロトーザイも伸びますが。） 着順掲示板に数字が挙がり、着順を確認すると･･････１着のところの数字は「１０」。ルパンユイナは「１１」で４着のところに数字がある。で、新聞に目を落とす。１０番ヒットランナー。山田がのるはずだった福山の馬だ。確かに福山ワンツーという結果には違いないが、これは･････。「単勝いくらつくんだ？」「三野さんはやっぱり怖い」という声が挙がる。万馬券は確実だろうと、確定発表を今や遅しと待っていると出た。馬単１２６,５１０円、馬複５５,７３０円、単勝は６０００円を越えた。  （雨が落ちてくる中、口取りに望むヒットランナー。） スカイタカオーの独走で幕を閉じるだろうと思われていた今年の補助馬戦線は、ここにきて大どんでん返し。ヒットランナーの勝因よりもスカイタカオーの敗因の方がわかりやすい。全く息の入らない展開でしかもハイペース。これではさすがに最後まで持たないだろう。ルパンユイナにしても、好発から積極的な競馬をしたのがかえって仇になった感じだ。終始前が競り合う展開になってことで差し馬有利の状況となったが、ヒットランナーも最初は先行争いに加わっていた、だが途中で上手く下げて息を入れ、最後再び脚を伸ばさせた三野騎手の手腕にはただ脱帽である。もっとも、それだけの力がヒットランナーにあったこと自体驚きであるが。ちなみに、９日の「福山エース」に掲載されたヒットランナーの桧山調教師の談話でも「まさか勝てるとは･･･。三野くんの手腕には驚かされました。」という言葉が。みんなが驚いた、今年の福姫交流であった。 もっとも、今回の結果が今後の３歳戦線へ及ぼす影響というのは、あまりないようにも思えるが(^^; 2002年3月6日 第17回福姫交流（指定・３歳補助馬） 1500ｍ １ ヒットランナー 福山 牡 3 54.0 三野孝 桧山博 465 -8 1:37:7 ２ トモシロトーザイ 福山 牡 3 54.0 藤本三 高本友 480 4 1:37:8 ３ スカイタカオー 兵庫 牡 3 54.0 坂本和 戸田山 424 -4 1:37:9 ４ ルパンユイナ 福山 牝 3 53.0 片桐正 那俄一 472 -2 1:38:2 ５ セレクション 福山 牡 3 54.0 野田誠 堀 部 473 1 1:38:5 ----------------------------------------------------------------------------- ６ リードオーカン 兵庫 牡 3 54.0 寺地誠 戸田山 443 4 1:40:0 ７ マキオライデン 兵庫 牡 3 54.0 松平幸 内本英 446 -2 1:40:3 ８ クインパウエル 兵庫 牝 3 53.0 米田幸 謝 明 416 -11 1:40:4 ９ ブルーマジシャン 福山 牡 3 54.0 石井幸 千 同 480 -2 1:40:5 10 ホウコウサイシン 福山 牝 3 53.0 黒川知 黒川幹 469 -11 1:42:0 11 ベアーダンス 兵庫 牡 3 54.0 松浦政 手嶋英 462 9 1:44:2 |